司法試験・予備試験の前に行政書士試験を受けるべき?メリット・デメリット

予備試験

司法試験への道のりは長い長いものです。合格への足掛かりとして行政書士資格を取得する受験生も多数。行政書士ルートはアリ?ナシ?2021年に両資格を並走した体験をもとに、メリットとデメリットと、近年の変化も含めてご解説します。

法曹への入り口に、行政書士という選択肢

長く険しい司法試験への道のり。ストレートで最短ルートをいっても数年ごしのチャレンジになります。「よし、受験しよう!」と決めてから合格証を手にするまでは長い年月がかかる司法試験。そこで、いったん関連資格の行政書士試験をとっておこう。そんな選択をする受験生も多いものです。

また、他資格を受験したあと、より大きな挑戦を求めて予備試験に参入する受験生もいます。いわゆる「行政書士ルート」の予備試験チャレンジ、果たしてこの選択はアリでしょうか?

他資格ルートは賛否両論

他資格ルートはアリか?ナシか?という問題はたびたび話題になっているのをお見掛けします。よりストレートに言ってしまえば、予備試験受験生の中には「行政書士・宅建を持っていたところで…」「役に立たないし」という声もあります。つまり自分の受験生活においては、他資格の保有が役立たないと感じる人もいるようです。

賛成派・反対派どちらにも理由があり、デリケートな問題です。

ぶっちゃけ、どっちがデフォルトとか無い

たとえばの話。我が家は車を持っていないのですが、同じマンションに住んでいても車を持つ派・持たない派があります。持っている人からすれば「無い生活はありえない」話ですし、無し派が車にかかるコストを聞くと「ありえない」。ウチはウチ、他所はヨソな話題というのはあるものです。

つまり単願・併願も各々の状況や価値観によって変わるもの。どちらが絶対的に合理的とは決め切れない問題であることを前提に、以下お目通しいただけると嬉しいです。

結論、受験スケジュール次第

筆者自身は2021年の夏に行政書士の受験を決意し、取り組んでいる途中で思い立って予備試験の受験も決めました。結果は行政書士合格、予備試験の短答は不合格という、喜びと失望の涙に暮れた10ヶ月でした。

行政書士ルートはアリか?という問題に対して、初めに結論を言ってしまうと受験スケジュール次第といえます。ここからケース別にご解説します。(なお、行書の受験体験は以下にまとめています)

1年未満で予備試験に受かりたい!短期受験生の場合

初めから予備試験を目標にしている初学者で1年未満で合格を目指すなら、他の試験に割く時間はありません。予備試験は単願で取り組んでも1年以上かかるのが通常。つまり筆者のように10ヶ月でダブル合格を目指すなんて…河野玄人さんならできたかもね⁉という話です。(ハイスペックで知られる河野先生は年末・年明けスタートで5月の短答式試験に合格し、ストレート合格されています。)

この属性の方は行政書士を初めから選択肢に入れないかもしくは、「模試代わりに」と割り切って特別な対策をせずに望むか。その二択ではないでしょうか。

既習の受験生・2年目以降の場合

すでに予備試験に向けた勉強をスタートさせている2年目以降の受験生に関しては、「ひとまず行政書士で合格証をゲットしておく」ことは大きいでしょう。ダブル受験のメリットが一番大きいのはこの属性の方といえます。予備試験の短答式試験で散って行政書士に流れる人も一定数いるようです。

11月の行政書士試験は予備試験の対策が中だるみしそうな時期。ここでエイッと行政書士に受かってしまえば翌年の予備試験に向けて弾みがつきます。

予備試験をいつ受けるか決めていない場合

予備試験を受けるか迷っている。あるいは受けると決めているが具体的に令和何年度の試験が本命か決めていない。…というか、決めたいけど決められない!という方も案外多いようです。

学業お仕事との兼ね合いで今年どれだけの学習時間を確保できるか分からない。この属性の方は”行政書士の短期チャレンジ”を実行してみる価値があるでしょう。3ヵ月~4ヶ月で受かる人もいる資格ですから、ベンチマーク的に受けても損はありません。

結局のところ…ダブル受験はおすすめ?

上記の3つのパターンから分かるように、どの属性でも受けたければ受けてOKというのが結論になります。

しかし、ここまで読んで「いやいや、そうは言っても自分の場合はスケジュール的に厳しい!」「予備試験の基礎講座を回しきれないし、寄り道してる暇ないよ!」と感じた方もいるかもしれません。そんな人については行政書士試験は論外です。行政書士試験は魅力・モチベーションを感じる人だけが受験すべきです。損得勘定でいうなら、開業予定がない資格にどれだけの価値があるのかという話になります。

受験しない派の注意点

他資格は受験しない!と決めたなら、行政書士ルート・司法書士ルートの受験生とは距離を置くことをおススメします。単願で問題なく受かっている人も相当数いるはずです。自分は自分、他所はヨソと思って深く考えないことを強くおススメします。

ましてや他の受験生と「他資格ってどう?」なんて話題にするのは、本当に内輪だけのネタにとどめることをおススメします。聞いたところで、すでに保有している人は「どっちでもいいんじゃない」と受け流すか「ぜひとったほうがいいよ!」と受験を説得されるか。受けた人にしか分からない情報も多い一方で、合格すれば思い入れも大きい。つまり、中立的なアドバイスは難しいものです。

受験する派の注意点

受験する派は、なんといっても予備試験との両立が大変です。

私は8月に学習スタートし、9月10月を予備の学習に費やしました。素直に考えればこの時期は行書でも出題される教科をやればいいわけですが、予備の基礎講義の1周目はできるだけ早めに終わらせなければならない。結局、10月に刑法・民訴にも手を出して、行政書士対策に戻ってこれたのは試験3週間前でした。

2023年8月追記|ここ数年で事情が変わった?

予備試験の日程改定

2023年から予備試験のスケジュールが2ヶ月後ろ倒しになり、行政書士試験の後の準備期間が伸びたのは大きな考慮要素です。

11月の行政書士試験から予備試験の短答式試験まで、元々は6ヶ月しか離れていなかったのですが、現行日程では8ヶ月あります。この差は大きい。行政書士を一つのベンチマークにして勉強して、さらに予備試験も…!という発想になりやすいでしょう。

過去問増えすぎ問題

しかし、話はそう単純ではありません。

予備試験の対策はとにかく量が多いのです。過去問も平成23年~令和5年の13年分とかなりボリューミーです。3年前と比べて計30本(10科目×3)の論文、計21回分(7科目×3)の短答が追加されたことを思うと、ここ数年で行書との両立事情はかなり変化しているように思います。30本の論文って、1日1本ペースなら1ヶ月余分にかかることになりますから。

行政書士試験の一般的な過去問集が5年度分に絞られているのに対し、予備試験・司法試験は現行制度の過去問は”ぜんぶやる”が一般的です。もちろん直近年度に絞ったり優先させる人もいて、すべてを完璧に対策することは難しいのですが、それはそれとして。平成23年度から対策することが一般的な予備校のカリキュラムに織り込まれているため、できるかどうかは別として教材がそこにある状態なのです。

つまり「行政書士経由で予備を受験したよ~」なんて声があったとして、数年前の体験談がどこまで参考になるか。ひょっとしたら、2023年~2026年の受験組が、行書・予備を並走する最後の層になるかもしれませんね(完全に想像の世界ですが)。

おわりに

資格はあるにこしたことない。そんな一般論から、やっぱり他資格も取っておいたほうが良いんじゃない?と考えるのは自然なことです。

ただし、受けるからには費用も時間もかかりますし、何でもかんでも採るべきではないのも事実です。モチベーションを保ちつつ合格につなげるために、ご自身の納得いく決断ができますように。

コメント