司法試験・予備試験対策に欠かせない答案作成。日々の起案でいつの間にか腱鞘炎になってしまった‥‥という人も少なくありません。ある日一文字も書けなくなった私の体験談を元に、腕の痛み対策についてお話します。
腕が!手が!悲鳴を上げている!?
こんにちは。予備試験受験生のkaoです。これを書いている今は秋。秋といえば起案の季節です(異論は認めません(笑))。
短答で落ちてしまった年は、涙を飲みながら起案。論文式試験を受けた今年も、やっぱり起案。予備試験の短答・司法試験が夏開催になった今、試験まで間があるこの時期は起案シーズンです。
各予備校の答練が実施されるのも秋~春先にかけてですね。
ともかく起案!今こそ起案!そんなときに忍び寄る危機が‥‥そう、腱鞘炎です!
まず医療機関の受診を
さて私の体験談に入る前にお願いごとです。手、腕、身体に痛みがある場合は、何をさておき専門の医療機関を受診してください。本記事は専門医に代わるものではありません。かかりつけ医を持っておく安心感は大きいです。
一般的な対策は「休め」。
さらに前置きとして、腱鞘炎になったら腕を休めるのが穏当、と言うことを書かせてください。疲れたなら、休みなさい。痛いなら、休みなさい。書けないなら、休みなさい。対策といえばそれに尽きることでしょう。
そのほかには湿布を張る、痛み止めを飲む(注射を受ける)、姿勢を正す、マッサージを受ける等の対策を耳にします。いずれも専門医に相談すべきことといえるでしょう。
とにかく疲れないペンが欲しい
腱鞘炎の治療は専門家にお任せする前提で。腱鞘炎を予防したい、うまく付き合いながら勉強をしたいと思う時に、真っ先に思うのは『手が疲れないペンを見つけたい』‥‥ということ。
人それぞれ手に合うペンは異なりますが、私の譲れないポイントは『ガリガリしないこと』です。
狙うは『ぬるぬる系』ボールペン
一般的なボールペンはペン先に紙を押し当てることでボールを滑らせて文字を書きます。手が痛いときはこのカリカリが腕に響いて本当につらい。
受験生界隈ではぬるぬる系の滑らかなボールペンとしてエナジェルが人気。ふつうの文具屋に置いてあるのが良い。細いほどガリガリするため、1.0mmあたりが定番かと。
そして値段高めですがPILOTのタイムラインも定評があります。3,000円~とお高めなのですが、万年筆のようなリッチな外観で値段相応。私は手に合わず、替え芯を1.3と1.6に付け替えて比較しましたが、重さとブレ具合が苦手でお蔵入りしました。勘ですが、万年筆が苦手な人に定評があるのかもしれません。
ボールペン<万年筆?
ボールペンのカリカリ感を軽減するのに使えるのが万年筆。万年筆はペン先が紙の繊維に触れることでインクが染みだすように色を乗せることができて、少ない力で書くことができます。
私はPILOTのライティブ、cocoon、kakunoという1,000円~3,000円程度の万年筆を愛用。(いずれも中字。同じメーカーでインクの互換性があり、ペン先がほぼ同じ。)
万年筆のデメリットは持ち方がしっくりこないと却って紙をガリガリ引っ掻いてしまうこと。チタン製の重いものを選ぶと長時間の筆記で疲れること。(重みで手をほぼ動かさず筆記できるメリットもあるので、あながち短所ともいえないのですが。)
上で挙げた中ではライティブがプラ製で日常使いにおすすめ。見た目も仰々しくなくて気に入っています。より安価なkakunoもプラ製ですが、本体が太いのが微妙。(でも可愛いので結局使ってる)
読みやすい字になるメリットも
万年筆はハネ・止めが自然と表現できるため、普段の自分の文字より美文字になるというメリットもあります。
個人的な体感ですが、同じパイロットでもタイムライン(ボールペン)と万年筆を比べると、万年筆の方が倍くらい綺麗に書ける気がします。(それもあってタイムラインは無駄に力を込めて筆記してしまうのかもしれません。)
「字が下手で…」と仰る方は高確率で細字のボールペンを使っていたりするので、太字の万年筆に変えるだけでもかなり読みやすい字になるかと思います。
普段使いのサインペン
そしてそして。万年筆よりさらに負担が少ないのがサインペンです。ペン先が柔らかく、紙を撫でつけるだけでインクが乗るタイプの筆記具。
日常の起案にはサインペンが本当におすすめです。サインペンで不要な力を抜く練習ができのも良かったです。サインペン以外でもだんだん早く・楽に書けるようになってきました。
私が使っているのは、uniのリブ、パイロットのプチ(中字)。リブはダイソーで入手。プチも使用感はほぼ同じです。いずれも文具屋に置いてなかったりするのでまとめ買いしています。
起案をシェアするとき楽
ふだん用にサインペンを使うメリットは、とにかくハッキリした字が書けること。ボールペンと比べると歴然なほどくっきりハッキリした字が書けます。
答案をスマホで撮ってpdf化するときに写りやすいこれは答練や模試を提出するときに超超超楽です。(何度も撮り直したりするのは本当に面倒ですから)
なお、試験用には『ボールペン・万年筆』が指定されているため、あくまで普段使い用としています。
腱鞘炎で詰んだ…?私の3つの後悔
さてさて。ペンを変えたところでどうにもならないくらい、痛みが本格化してきたら‥‥一体どうすればいいのでしょうか。ここからさらに私個人の体験談をベースにお話ししていきます。
私の腱鞘炎が一番ひどかったのは、予備試験に参入して一年弱の春でした。基礎学習が終わり起案をがんばらないといけない。もうすぐ短答直前期。今こそ論文対策‥‥!と、そんなタイミングでした。
そんな折に腱鞘炎が悪化してペンが持てない状態になってしまい、この年は短答敗退。今でも「なぜにそこまで酷くなってしまったのか!?」と悔やんでいます。
悔やんでいるのは主に、ある思い込みから体調管理を甘く見積もってしまった、という事への後悔です。
一日〇通書く!という思い込み
皆さんどのくらいのペースで答案を書いていますか?
論文対策にはさまざまなアプローチがありますが、「答案はできるだけ実際に書いた方が良い」。こんな価値観は多くの受験生が共有していると思います。
しかも今の私たちは予備試験過去問が10年以上積み重なった世代。過去問増し増しジェネレーション。とにかく書くものが多くて多い。
Xを開けば論文試験の直前期などは『1日5通書いた』なんてポストも。本番の試験では10通を2日間で書くわけですから、それにコンディションを合わせているのでしょう。
直前期以外はさすがに1日5通書くのは大変です。‥‥でもまぁ、1日1通2通くらいならそうびっくりするような数ではない。
そしてここに私の思い込みがありました。「1日1通~2通は決して多くない」。まさかその程度の起案量で腕が故障するなんて思ってもみませんでした。人それぞれ体力には差があるというのに。
予防が肝心!という思い込み
腱鞘炎対策として「正しい姿勢で書きましょう」とか、「適度にストレッチ等を取り入れて」といった話はよく聞きます。
我が家は小さい子どもがいて自分が倒れたら家の中が崩壊確定です。だから健康にはかなり気を遣っていました。
とにかく落ち着いて座って勉強することが難しい環境だったので、立ったまま道端で答案を書くこともあるくらい「ダラッと座りっぱなしで勉強する」の対極にありました。座る姿勢も意識。頻繁に立ち上がって休憩とって。書見台も活用して‥‥。
さらに筋トレ、ヨガ、瞑想、食事はクリーンフード、睡眠時間の最適化etc‥‥。
と、ここに二つ目の思い込みがあります。「これだけ意識的に取り組んでいるのだから、体調管理は大丈夫だろう」という思い込みです。(もちろん「チートデイ(休む日)」というものも意識的に作っていましたが、それを含めても。)
腕が痛い!という思い込み
最初に感じたのは、「腕が疲れてるな、ちょっと痛むな」という程度でした。
腕が痛いので休もう。何日かして、回復したからまた書こう。書いたらやっぱりちょっと痛い、無理しない方がいいな。今日は1通で止めとこう、明日は休もう‥‥。と、こんな調整もしつつ二週間くらいしたらさらにズキズキと痛み出しました。
時を同じくして、「そういえば膝が痛い」「腰も怠いんだよなぁ」「目が疲れてる」と、一つ一つは大したことのない他の不調も起きていました。
そして痛みはやがてペンを持つのすら耐えられない激痛に変わっていました。利き手側の半身が痛い。夜中に呻くほどでした。
ということで三つ目の思い込みは、さもありなん。不調は手や腕だけで起こるものではない。腕が痛い。それから‥‥腕の付け根が痛い。あれ?よくよく考えてみると背中?座骨?それとも肩甲骨???いや、そっちも痛いんだけどやっぱり親指も痛くて、とにかく色々痛くて!
整形外科を受診して言われたのはこうです。「手の疲労とストレートネック。痛みは目、首から肩と腕を伝って、腰と膝に連動しています。痛み止めと湿布を出します。リハビリを予約してください。」
シャレにならない腱鞘炎
整形外科で診断を受け、リハビリとして温熱マッサージを受け、それでもすぐには引くことの無い痛みを抱え、思いました。
あ~やっぱり書きすぎてたのかなぁ。もともと身体が強い方じゃないしなぁ。まぁ短答対策もしないといけないし、インプット学習メインで行こう。
その半月後には眩暈症を患い、猛烈な吐き気に見舞われ‥‥書くのはおろか、読むのも耳学習もできない状況に陥ったのでした。(詰んだ。)
今の私の腱鞘炎対策
さてさて、シャレにならない腱鞘炎エピソードを披露したところで、時は変わって一年半後の今です。今年は短答突破して、会場で10通の論文を書いてくることができました。
自分への期待値が低すぎかもしれませんが、10通書いてこれた!の時点でなかなかに感動しています。だってペン持てない時期もあったんですよ?それが10通!
そんな最近の【個人的な】腱鞘炎対策はこうです。
定期的に書いて休む
話は最初に戻りますが、腱鞘炎対策には腕を休める。起案を休む。書かないことが第一です。痛みが悪化してしまったら1ヶ月でも2ヶ月でも休まないことには回復しなかったり。もちろん症状により異なるでしょうが。
それなら極力書かない方が良いのか?と言うと、個人的にはそうでもありません。
私がわりと起案好きという前提があるからかもしれませんが、全く書かない時期が続くとそれはそれで精神衛生上難しい。書くのが過剰に怖くなってしまいます。うまく書けないことももちろんですが、「またあの痛みが来るのか」という恐怖が。
さいきんは1日1通が上限(1通あたり4、5Pほど)。3日~4日書いて1日休むペースで続けています。が、これも都度変えていこうと思っています。
たまにPC起案に置き換える
ここまで読んで、「腕痛いならパソコンで起案すれば良いのでは?」と感じた人もいるかもしれません。もちろん腕の調子次第ではPC起案や他の勉強に置き換えたりしています。
が、丸々PCに置き換える予定はありません。上述の通り、痛みは腕だけでなく目、首、全身に起こり得るうえに、眩暈吐き気など他の症状もあり得るからです。
腕が痛いから書くのやめてテキスト読むことにした。すると今度は頭が痛くなって眩暈がして起き上がれなくなった。それが過去の私です。PC作業もさまざまな負荷がかかることはご存じの通りです。
そしてPC起案はそれはそれで手書きにない面倒なこともありまして。時々なら取り入れるけど起案の全部をパソコンにぶち込む予定は無いのです。
ストイックをやめる
もうお気づきかもしれませんが、私の腱鞘炎はメンタル要因が5割~7割といったところです。この、メンタルが痛みにも影響している、という発想はいざ自分の身が痛んでいる最中は、なかなか実感し難いものです。
そりゃ、勉強は大変だからストレスは溜まってる。そして痛いから余計にストレスが溜まるんだよ!ストレス解消が大事、そんなの知ってる。けどね‥‥とこんな風に感じてしまいます。
痛みとメンタルの関係性
ここ数年、痛みとメンタルの関連性がそこかしこで解説されるようになりました。詳しい解説は書籍等にお譲りしたいのですが、そもそもこのあたりの話が初耳だという方は「痛み メンタル」や「心身症」あたりで検索してみてください。
ここでは受験生活のストレスと痛み、という観点で考えてみましょう。
自己管理も実力のうち?
学生さんは学業やアルバイトと、社会人は会社や家庭と。学習をさまざまなことと両立するのは本当に大変なことです。ストレス?そりゃ溜まらない方がおかしいって!
みんな大変だから。みんな過酷な環境でも勉強しているから、当然として体調管理・自己管理はできて当たり前の世界。
‥‥といった空気を感じることはありませんか?
私は自分の不調を他人にしゃべるのは恥ずかしい‥‥と、思ったことはありません。が、痛いツラいの愚痴はわざわざ話題にすることじゃないという認識があります。例えばですが、「生理痛ツラい!」みたいなこともあるわけですが、わざわざXにポストしたり人に聞いてもらうようなことでもないかな、と。
こんな風に、(そんなつもりじゃないのに)ストレスを貯め込みがち、自己完結しがち、という人は案外多いかもしれません。
アドバイスの弊害
自分の中に貯め込み過ぎるのは考えものですが、オープンに意見を求めることも時に弊害があります。他人のアドバイスがかえって不安を産んでしまうのです。
個人的に見なければ良かったな、というアドバイスがあります。検索して目にした『正しい姿勢で書いていれば身体が痛むことはない』という言葉です。
これを見て姿勢についてはかなり研究をしたし、グッズも色々買い集めたのですが、その改善のメリットより『私は姿勢が悪いから痛んでいるんだ』と思い込むことのデメリットの方が大きかったように思います。
当時の痛みは手や体のポジションだけで対処できるものではありませんでしたが、『自分が何かを間違っているからこの痛みがあるんじゃないか』という思い込みが産まれました。
このアドバイス自体が間違っているわけではなく、つまりこの話は自分のストレスと他人のアドバイスが嚙み合わない一例なのです。
あなたが痛みに困っているときに、こんなアドバイスをもらうことがないでしょうか。‥‥「それってこれが原因じゃない?」「これが効くよ」「これは試した?」「こういうのはダメらしいよ」
アドバイスをきっかけに犯人探しのように原因を追究してしまったり、自分の痛みを他人に受け容れてもらえない、他の人はこんなことで悩まない、‥‥というように感じてしまうと負のスパイラルです。
人と話す
人と関わらないのも関わりすぎるのも心を乱す要因。結局どうすれば良いのかと言うと、月並みですが信頼できる相手を見つけて関わることではないでしょうか。身の回りの人に頼れず、Xでちょっと呟くだけではなかなかメンタルもカオスです。
去年、身体の調子が戻ったところで人と意識的に、個人的に会話するようにしてきたのですが、それで徐々に…少しずつ少しずつマインドが変わってきたように思います。色々な人に勉強のヒントをもらってかなり柔軟になった気がします。
似たようなアドバイスでも、相手の人柄を知っていれば過剰に受け止めてしまうことは少ないです。例えば‥‥「〇〇さんのことだから、こういうニュアンスで言ってるんだろうな」「こういう悪い意味では言ってないな」‥‥という風に、フラットに受け止められると良いですよね。人から貰う助言が二倍三倍の効果をもたらす気がします。
受験生あるあるなストレス要因
ストレスが痛みや不調を誘発。そんなリスクは回避したいものですが、ストレス要因が分かっているだけでも、自ずと避けられたり、「今の自分の悩みは自分だけの問題じゃないんだ」と思えるのではないでしょうか。
ということで、最後に『この時期の予備試験受験生にありがちなストレス』を記載します。
短答合格前のあるある
- 答案がうまく書けない
- 答練で辛口評価
- そもそも答案を書く体勢になれない、起案を始められない
- 勉強をどう進めていけばいいか分からない
- 短答対策と論文対策をどう両立すればいいか分からない
- 過去問や演習書を見て、こんなの一生書ける気がしない…etc
‥‥この時期は起案、そして学習そのものが軌道に乗らずストレスですよね。
軌道に乗らないというより、正確には、軌道に乗っているという実感が得られる場面が無い。試験までまだ日にちがあるから模試など成長を実感できるイベントもないですし。
こういう時期こそ周りの受験生と会話するだけでも違ってくる気がします。同じフェーズの仲間を探すのも良いですが、個人的なおすすめは属性に拘らず仲間を捕まえることです。(短答合格経験あり・なし、予備・司法、世代近い・離れてるetc、拘らず。)一人二人とだけ喋っていると、また別の焦りが産まれるからです。
人と関わるって、月並みでありきたりな方法に聞こえるでしょうが、とにかく「悩み続ける」っていうステータスから脱却できれば良い気がするんです。起案の成果は一昼夜では出ませんから、自分の機嫌をとりつつ「凌ぐ」部分も必要かなと。
論文試験後のあるある
- 試験で燃え尽きて学習ペースが戻らない
- 結果が気になって毎日新鮮に心配
- 口述と来年の予備、何に照準を合わせれば良いのか‥
- 試験本番を思い出して、あんなの一生書ける気がしない
‥‥この時期は本当に感情のアップダウンが激しいですよね。「もし落ちてたら…」「もしワンチャン受かってたら…」というシミュレーションを何十回としてしまう。もう散々したはずなのに、朝目が覚めると毎回イチから考えてしまう。(なんなんだ、ほんとに。)
さいきん私は司法試験論文過去問を起案しつつ、口述対策に繋がりそうな実務の勉強をしています。合格推定は無いんですが、いろいろ人に話を聞いた結果こうなりました。
正直、シホシケにしろ口述にしろ全然解けなくて「やっぱり私は予備受かるレベルじゃないんだろうなぁ…」って思考がトリップしてしまうのですが。まぁそれも含めて来年活きてくるでしょう。
おわりに
ここまで読んでいただきありがとうございます。痛みに悩むあなたが、良い病院、良い対処法に出会えることを祈っています。
そして、勉強上手くいかないな~…なんて時は、つい「四の五の言わず勉強やらなくちゃ!」と気合を入れたくなるのが人の常。なのですが。気合のまま結果を出せるか、ある日ボキッと折れてしまうかは運ゲーに近いものがあります。ということで、悩んだりストレスを感じる自分を責めても仕方ないのかな、と。
そんなこんなで、さいきん他の受験生とあまり絡んでないな~という人はXでお気軽に声かけてください。合格に向けてお互いがんばっていきましょう!
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