行政書士試験では、択一式問題のみで合格点をクリアしたい。そんな「択一のみで180点」を目標にする受験生の方は多いですが、果たしてどれだけ難しいのでしょうか。択一182点の合格者が感想をまとめました。
本試験では…択一180点を目指したい⁉
こんにちは。最近は商法の勉強中の管理人です。行政書士試験の結果発表が終わり「来年の行政書士試験では択一のみの点数で合格点・180点を目指す!」というコメントをおみかけします。昨年の同じ時期も同じでした。特に「記述の結果待ち」の末に不合格で涙をのんだ受験生にとって「択一のみで180点」を決意するのも無理はないでしょう。
「択一のみ180点」に安心感?
数年前にXでお見掛けしたやりとりで、こんなものがありました。ある先生が「択一180点を目指せばいい」という内容のポストをしたのに、受験生が「そうですよね。そう聞いて安心しました!」とリプしたのです。
え?安心? 筆が滑ったのか、言外の意味があったのかは分かりませんが腑に落ちませんでした。「がんばります!」とかなら分かるけど「安心しました」って…どんな心境?
安心はたぶん何かが違う
その方の心境は分からない前提で
もし「択一180点を狙う堅実な目標が決まって良かった。方向性が定まって安心しました」…という意味ならそれはたぶん、受験生ハイみたいなもの。
だって冷静に考えたら…
目標決めて安心って言うときの「安心」って計画立てて成功イメージして脳が満足しちゃう現象だし
択一180点は堅実かちょっと微妙、もとい、わりにギャンブルだと思うのです。(前半部分については、きっとその人ご自身も分かっていることだと思うのですが。)
あえて言いたい。択一180点ってハードル高すぎ
さて、私自身は2021年の行政書士試験で択一182点・合計210点を獲得しました。試験直前の模試の最高得点は約150点ですから、択一で182点は大当たりの過去最高点数でした。そんな私が個人的に思うのは択一のみで180点ってすごくハードル高くない??ということです。少なくとも、これが一番手堅い戦略だ!というほど安定感のある点数戦略じゃないと思うのは私だけでしょうか。(誰もそこまで言っていないかもしれませんが。)
以下私自身の【個人的な感想】で、ひたすら「記述と分散させて点数狙う方が安パイに感じる」という私見になります。あくまで択一対策を頑張りたい!という方を否定するものではありませんので、お茶請け的に読んでいただければ幸いです。
私が択一180点を狙わなかった理由
受験当時、私は「択一のみ180点」を全く狙っていないどころか「狙ったら(自分の場合は)キケン」と感じていました。理由は、メンタル的なものと能力的なもの…それを総合した状況判断になります。誰もが同じ状況ではありませんので、この人はこんなケースだったんだな~と片耳で聞いていただければと思います。
択一重視だとメンタルが持たなかった
択一対策に飽きる
行政書士試験といえば来る日も来る日も択一対策。あれ、飽きませんか。憲法の統治、行政手続法、商法なんてホント短調です。理解が問われる行政書士試験。しかしベタ暗記がモノを言う分野も多いです。
択一対策に「飽きる」というのは大きな問題で、個人的には「六法の読み込みがツラい」「理解が難しい」「暗記できない」みたいな問題も「飽きる」から派生している気がします。なんというか脳がフレッシュな状態になってくれないので、成果が得られないんです。
「肢別何周できた?」がシンドイ
行政書士試験の受験生の中では「肢別を何周回したか」という話題がたびたび登場します。あの話題、しんどくないですか。上には上がいるから回した数で勝てるはずがありません。
中には「肢別10周以上回したけど受からなかった」という人もいるようで、やはり択一対策だけに猪突猛進するのは効果的ではないのか?という疑問がうまれます。「何周目終わったぜ!」と言っている人には拍手を送るべきなのですが、真似して同じコースに乗ろうとすると勉強が嫌になりそうです。
〇×だけで知識をつけるの限界
問題にあたって、テキストに立ち戻って。理解を深めていくことが肝心。…なのですが。択一って要するに「〇×問題」ですから、あれだけで深く理解するというのは難しく感じました。特に異なる単元同士のつながりが掴みづらいですね。
ちなみに司法予備試験の受験指導では択一(こちらでは短答と呼びます)には「極力時間をかけない」がセオリーとなっています。論文試験があることが最大の理由ですが、「択一の問題ばかり解いていても知識がつかない」と仰る先生方は多いです。応用的な学習をしながら択一を底上げするのが定石となっています。
記述対策との両立
記述対策をいていて「この分野、ぜんぜん理解できてなかった!!」という発見したことはないでしょうか。肢別だけを追いかけていたころとは全く違った気づきがあるはずです。もちろん記述対策を進める=択一が後退することには直結しません。しかし限られた時間のなかで択一にいったん見切りをつけて記述対策のウェイトを増やす必要に迫られる場合もあります。
今からびっしり対策すれば択一の正答率を上げて180点に近い状態にして、その上で記述対策にうつることができる…と理想を言えばその通りですが、それは誰もができて当然という事ではないはず。
結局こうなるパターンも想定
夏ごろに何が起きるでしょうか。しっかり対策してきたのに択一の点数が伸び悩んでいる!模試を受けたのに150点~160点近辺。記述もぜんぜん書けてないからソッチもやらなきゃ! …去年の夏頃もこんな声が多かったですし、例年こうなのだと思います。
択一で180点とるのが確実。そりゃそうなのですが、学習が進むほどこれがいかにシビアなハードルか実感されます。点数が頭打ちになったときにメンタル的につぶされず、ひたすら択一の正答率をあげていく方向に進むのか、記述式で点数を取ることに目を向けるのか。どちらが手堅い戦略なのかは「その時点で」また見極め方が変わってくるはずです。
択一式問題の配点がシビアすぎる
一般知識が予測不可能
さて、ここからは180点という点数をどの科目でどうゲットしてくるかという話になります。言うまでもないですが、ほんと一般知識は何が出るか分かりません。私は本試験で一般知識が通常の+2~3問ほど解けて助けられました。2問多く解けたら8点、3問で12点ですからこのラッキー・アンラッキーは大きい。
もちろん一般知識対策というものもありますが。法律分野よりも出題の予測がつかず点数に直結しにくいのが難しいところですよね。
多肢選択・文章題が予測不可能
当たり外れでいえば多肢選択。そして一般知識最後の文章題。さらに、基礎法学も国語の問題に近い問題が出題されることがあります。どんなテーマ・単元から出されるかも不明。文章題はカッチリ嵌れば満点で、嵌らなければ0点…ということも往々にしてあります。
行政法ノーミスじゃないと厳しい
一般知識と多肢選択・文章題が予測不可能。そこに加えて商法・会社法が対策しきれない。民法の応用問題も難しいし、細かすぎるところは捨てたい。…となると、180点をクリアするには憲法・行政法で点数を落とせなくなります。過去問と同じ問題が多数出題される分野だから「行政手続法は満点を目指す」とはよく言われます。しっかり対策していけば確実に点数がとれるはずですが…。
ここは価値観次第ですが「せめてこの分野は対策を万全にして点を取りこぼさないようにするぞ!」と思うか、「いや、ノーミスに仕上げるとかきっと無理だから記述でも点とろう」と考えるか。どっちが腑に落ちるかは人それぞれではないでしょうか。
択一に自信がない受験生は…
180点狙えるレベルじゃなかった
以上を総合して、究極の話ですが私は学習期間を通じて「択一のみで180点」を真面目に狙えるレベルに達していませんでした。当然ですが「択一のみで180点」を目指している方は、決して「記述は全捨てでOK」ということではないと思います。記述の対策もしたうえで、択一だけで合格点に達することを目指していらっしゃる。それって、合格者の中でも上位合格者をイメージしているのではないでしょうか。
短期受験生の場合そこは狙いに行けないので択一180点を「狙ったら(自分の場合は)キケン」という最初の話につながります。つまり狙いの先を見誤らないのは大事だし…とにかく「択一だけで合格とか高望みしないから、なんとか合計点で180いってくれ~」というのが本音。
戦略も何もないじゃん!というお恥ずかしいオチなのですが。やはり択一180はレベルの高いところを狙っている、というのは最後の言い訳として書かせていただけると。
180点越えできた知識以外の理由
私が本試験で択一182点をマークできた理由、ここまで読んでお気づきでしょうか。一にも二にも運は大きいです。(一般知識で知ってる問題が出た!!)
それから「文章読解は問題文の中に答えがあるから、絶対に満点」と決意し、文章読解から最初に解き始めるようにしました。(それまでの模試では最後に解いていました。)穴埋め問題だけでなく長文読解以外の問題でも文章読解で解ける物があるため、一般知識は全て先に解き→基礎法学にうつりました。
記述だって自信がない!…けど
択一に自信がない人は記述も自信がないのが自然です。私も模試では空欄のままだったので、自信もなにもありませんでした。最後の1カ月は「記述で0点を回避する」というのをテーマに勉強しました。
記述にウェイトを置いた勉強をしたことで知識がレベルアップし、自信がつきました。本試験当日「1週間前とは知識が全然違う」という気持ちで試験会場に行けたのが大きい。そして結果的に択一の点数も底上げされました。記述式のアレコレは書ききれないため、以下にリンクを張ります。
最後の最後でどこから点を持ってくる?
試験直前期の最後の最後にどこから足りない点数を持ってくるのか、というのは究極の問題です。
模試150点(記述0点)だった私の場合。ラスト1カ月で択一を30点アップさせるのは結構しんどい。それより0点の記述を15点~20点くらいにアップさせるほうが手堅いのではないか。択一であとプラス4問、記述は1問は基礎的な問題がでるから絶対に書いてくる。他2問は部分点を少しでももらう。…このあたりは個人的な点数戦略になります。
結局のところ【その時点で、それまでの点数と学習を踏まえて、何ならできそうかな?】というのを決断していくしかないもので。タテマエや一般論はそれとして。誰かが今この瞬間の決断を代わってくれるわけではないですよね。なんともシビアですが、自分がこうと思った方法でいいのだと思います。
結局この話題って…
もうお気づきだと思いますが。「択一180点」って試験後~春先の、「さ~来年・今年どうしよう~」って時にたびたび登場する話題です。
夏以降~試験直前は各々シビアになってきますから、だいぶ下火になってくる。一部の余裕ある受験生が模試の結果を公開しつつ周りを焦らしているのは見かけます。
そして試験直前の秋ごろはかなりデリケートな話題です。この時期こんな話題を出してる先生がいたら、ネタ切れだからって下手なことつぶやかんでくださいと私は言いたい。
おわりに
最後の最後でひっくり返すようですが、ふつうに択一180点の合格者もポロポロいるわけですから、そんなに無茶な目標ではないのかもしれません。上記は、受験当時のなかなか点数につながらない時期のしんどさを思い出して書いてみました。
受験時代、合格者や講師陣からの「それって考え甘くないですか~?」と言わんばかりの戒めコメントというか、ツッコミの類って読みたくなかったです。(反対に「そんなに大騒ぎしなくても行政書士くらい受かるよ~」みたいな茶々入れもツラかった。)この記事がそんなノリに聞こえてしまったとしたら…本当に申し訳ありません。
貴方の学習生活が充実したものになりますよう、祈っています。ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。
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