行政書士試験で出題される「一般知識」の科目。あなたはどの程度対策していますか?対策が難しいけど足切も心配。悩みの多い一般知識の対策を過去問例題とともにご紹介します。
行政書士試験の一般知識というハードル
こんにちは、2021年合格者の管理人です。行政書士試験の中でも一般知識の対策はけっこう話題になっていますよね。「みんなどれくらい対策する?」「どんな対策してる?」などなど。ご存じの通り行政書士の一般知識は政治、経済、知識、オリンピック、エコ、コロナ対策…などなど出題分野が多岐にわたるから対策もたいへんです。
試験で足切りにあいたくない!
合格基準
次の要件のいずれも満たした者を合格とします。
一般財団法人 行政書士試験研究センター
① 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50パーセント以上である者
② 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40パーセント以上である者
受験生が最も恐れているのは、いわゆる「足切り」。①法令科目は244点中122点以上、②一般知識は56点中24点以上が合格ラインです。1問4点の配点ですから、一般知識で6問以上正解することが必要。14問中6問…少ないようで多い厄介なハードルです。
いくら法令科目ができていても一般知識で足切りにあうと不合格。そう思うと曲者なパートですよね。
一般知識は対策する?しない?
さて一般知識はどの程度対策するのか受験生によって温度差が大きい科目です。それぞれ見ていきましょう。
対策する派
私は20年度合格ですが、公務員試験の参考書と演習問題、市販テキストの情報通信分野熟読はかなりやりました。
Yahoo!知恵袋
まず、文章理解3問は全部取りましょう。 情報通信・個人情報保護もITパスポートなどの資格が参考になりますのでさらっと読んでみて下さい。
同上
一般知識の対策としては、時事問題を扱う書籍や他資格の参考書などを活用する人が多いようですね。もちろん行政書士に特化した問題集や参考書も、大手伊藤塾さんや早稲田セミナーさん等から発売されています。
対策しない派
私はニュースを軽く見るのが日課でして、したがって一般知識はそれだけで対策は何もしてませんが行政書士試験は受かりました。
Yahoo!知恵袋
対策としての勉強は全くしませんでしたが、問題の出し方だけは過去問で確認をしておきました。 ここだけはおそらく、2〜3ヶ月くらいの長めの時間をそれだけにかけても、極端に実力(正解率up)はつかないと思います。
同上
対策しない、というと語弊がありますが日々の情報収集+過去問で確認したのみという合格者も多いです。新聞を読む、ニュースを見る・読むなど。新聞など試験のために新しく購読を始めるというよりは、それまで習慣にされていたことを意識的にじっくりやる、途切れさせないようにする、という印象です。
私自身も一般知識は過去問を5年分×1回解いたのみ。ニュースは1日10分耳で聞く程度です。
一般知識にあまり時間を割けない現実
なにが出るかわからない一般知識。軽視すべきではありませんが、そうはいっても法令科目の対策が最優先ですよね。行政書士の先生方の動画etcを見ても、「余裕がある内にやっておこう」「法令科目の合間にやっておこう」など、息抜き的にでもシッカリに対策しておいてね!という趣旨のアドバイスをお見かけします。
「ここは出ますからね!」と言えない一般知識ですから、受験生の対策にも温度差があります。特に短期で取り組む受験生については、やるべきか以前に手が回らないのが実情です。私はLECの市販のテキストを使用していましたが、一般知識については3ページ読んだかな…?というレベルです。
なお夏スタートの学習記録を以下の記事にまとめていますので、ぜひ合わせてご覧ください。
対策しない派の一般知識の解き方
さて、ここからは一般知識より法令科目に時間を割きたいという方に向けて「対策しない派の解き方」をご解説していきます。
ニュースに目を通したり参考書を読んだり、といった方法よりベターということではありません。あくまで一般知識を対策する時間が無い方向けですのでご了承ください。
最初に文章題を解く
文章問題で点を落とせない!というのはよく言われている話です。私は最後の文章読解の問題を試験の最初に解いています。そして全問題中、ここに一番時間をかけています。記述式よりも読解の方に時間を割くくらいです。記述式は書けないときは書けない。でも読解は、問題文の中に正解があります。
ここを手早く解いて、2回目の見直しの時に戻ってこようとしても(私の場合は)ムリでした。時間配分的にもキツイのと、一度でも回答を書いてしまうと「これって変えて良いのかどうか??」と悩んでしまいます。選択肢も似通っているから、見れば見るほど「やっぱりこっち?それもとこっち?」と迷ってしまう。だから最初の1回をとにかく精読して熟考して答えを出すようにしました。
常識的に判断できる問題を探す
一般知識…というより、常識的にその場で考えたら答えが推測できる問題もあります。以下の設問、初見の方はぜひ解いてから説明をご確認ください。
平成29年
問題52 消費者問題・消費者保護に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。
ア 不当な表示による顧客の誘引を防止するため、不当な表示を行った事業者に対する課徴金制度が導入され、被害回復を促進するため、顧客への返金による課徴金額の減額等の措置も講じられている。
イ クレジットカードの国内発行枚数は、10 億枚を超えており、無計画なクレジット利用から自己破産に陥る人数は、今世紀に入り毎年増加し続け、年 100 万人を超えている。
ウ 自動車のリコールとは、欠陥車が発見された場合、消費者庁が回収し自動車メーカーが無料で修理する制度のことをいう。
エ 全国規模の NPO 法人である国民生活センターは、国民生活に関する情報の提供および調査研究を行うことはできるが、個別の消費者紛争の解決に直接的に関与することはできない。
オ 地方公共団体の消費生活センターは、消費生活全般に関する苦情や問合せなど、消費者からの相談を受け付け、専門の相談員が対応している。
1 ア・イ
2 ア・オ
3 イ・ウ
4 ウ・エ
5 エ・オ
この手の問題のポイントは、読む箇所を誤らないことです。分からないところを読みすぎても時間がかかるのと、混乱してきて予測が立てにくくなります。
上記の問題なら太字にした箇所を丁寧に読みます。まず㋔の肢が〇なのは常識的に判断できます。知っているか知らないかではなく、そうじゃなきゃ困っちゃうよね、という発想で。
そこで肢を絞って㋐と㋓を比較します。㋐はよくわからなかったので読み飛ばしました。㋔は”紛争解決に関与できない”…ってどういうことだろう?じゃぁ国民センターはデータの処理だけしてればいい機関なの?それじゃ困っちゃうでしょ、と考えて「×」と予想しました。
(※正解は2)
(ちなみに、国民生活センターの事業内容として「調査研究を行うとともに、重要消費者紛争について法による解決のための手続」が挙げられるそうです。)
文章読解で解ける問題を探す
最後の3問以外にも問題文・肢の読解で解くタイプの問題があります。
令和3年
問題56 国土交通省自動車局による自動運転ガイドラインに定められた車両の自動運転化の水準(レベル)に関する次の記述のうち、妥当でないものはどれか。
1 レベル 1 は、縦方向か横方向か、いずれかの車両運動制御に限定された機能についてシステムが運転支援を行い、安全運転については運転者が主体となる。
2 レベル 2 は、縦方向・横方向、両方の方向の車両運動制御について自動運転機能を有するが、安全運転については運転者が主体となる。
3 レベル 3 は、全ての方向の車両運動制御について自動運転機能を有し、人の介入を排除し、安全運転についてもシステム側が完全に主体となる。
4 レベル 4 は、限られた領域で無人自動運転を実施し、システム側が安全運転主体となる。
5 レベル 5 は、自動運転に関わるシステムが全ての運転タスクを実施し、システム側が安全運転主体となる。
私は車を運転しないし車のことも分かりませんが、この問題はドライバーを優遇するための出題ではないはずです。自動運転化…って機械が勝手に運転してくれるってこと?くらいの発想をもとに、太字のところだけを読みます。
人じゃなくて機械が運転するって凄いことですよね。この1~5の肢は機械の進化具合とどれだけ機械に任せられるかを順番に並べているのでしょう。そう読むと、肢3の「システム側が完全に主体となる」という文章は前後の肢とつじつまが合いません。システムが「完全に」主体。(それって私でも運転できるってことでしょうか…。)
この問題が読解で解けるタイプなのかどうか、出題意図や他の人が解けそうか、という所から予測を立てます。というと仰々しいですが、「こんなの車知らなきゃ正確に分かるわけないじゃん」→読解でいけないかな…という程度の発想です。
(※正解は3)
知識で解くのと現場思考で解くことと
これは私個人の問題かもしれませんが、知識で解く問題と現場思考で解く問題を分けて考えないと頭が混乱して判断が鈍ってしまいます。
一般的には「まず自分の知識で解こう」「分からなかったらときだけ、消去法や読解で解こう」と指導されます。私も法学科目についてはそれに従っていますが一般知識は現場思考による判断8割:自分の知識の活用2割、という気がしています。
というのも一般知識の問題ではけっこう細かな知識が問われます。前述の自動運転ガイドの話で言えば、一度くらいはニュースで聞いたことがあるような話題です。しかしレベル1~5の内容を正確に記憶している人はレアじゃないでしょうか。「あのニュースで、なんて言ってたっけ…たしかレベル1は…」と思い出してしまうと、かえって混乱します。もちろん、「これ知ってる」で正解を導きだせるならそれに越したことはないのですが。
意地悪で出題しているわけではない
試験委員は受験生を意地悪でオトすために一般知識の作問をしているわけではない…ことでしょう。一般常識を備えている人なら6問は解ける。はず。
そして完全に推測ですが「ちゃんと真面目に取り組んでる人ならギリギリ6問解けるように配慮」して構成しているのではないかと思うのです。受験生に対して、ニュース検定や公務員試験の問題集を楽々解けるようなスキルまでを求めているかというと…疑わしいです。
5年分の過去問の感触としては①文章読解で3問、②読解による推測で2問、あと1問くらい知識で正解できませんか、できなくてもヤマカンで1個くらい正解するでしょう、といったところ。でもここでイージー問題ばかりにしては受験生の危機感が損なわれるし一般知識を出題する意味自体がなくなってしまので、難易度の高い問題も散りばめるし、時事問題に強い受験生が優先される仕組みなのは当然ですが。
一般知識の対策しない派の対策まとめ
- 過去問を解いて各年度で何問とれるか確認しておく
- 1.で年度ごとにバラつきがある場合、「知ってる分野が出題されなかった」年で何問とれるか確認しておく
- 読解問題、現場思考問題を探して解き方に慣れておく
- 法令科目を含めた問題の解き順を決めておく
解き順について、①文章読解(問58~60)→②一般知識の先頭(問47~57)→③法令等(問1~)あとは順番通りに解いていました。これは知識で解けなさそうな問題だけを先にまとめて解きました。法令の問1も国語の問題ですから、ここも獲っておきたいところ。
解き順についてはいろいろな好みがあるかと思います。ぜひ時間管理しやすい・焦らない・ペース保ちやすい順序を見つけてみてください。
6問正解できていない場合
過去問を一通り解いて、どうも各年度6問正解できてない、という方は問題の読解を間違えていないかふりかえりをおススメします。令和2年では問51、問53、問54、問55、問56(前述)が現場思考である程度絞れる問題でした。絞れる、という程度ですので全問正解する必要はありません。ただ、一度くらい振り返ってみると気づきがあるかもしれません。正解の知識のチェックではなく、この肢の文章のどこを読んで判断したのか、どこに気づけば予測が立てられたかなど。
ちなみに、対策するか迷ったら?
私自身は5年分の過去問で最低6問、だいたい7問~8問解けていました。そして学習のスタートが夏で遅かったため何をどう考えても法学科目に注力するより他ありませんでした。このあたりの判断は自身の学習状況によりますよね。実は一番だれにも正解が分からないうえに運命を分けるのは、この一般知識にどこまで付き合うかという判断かもしれません。
まとめ
付け足したような形になってしまいますが、日々の一般知識の情報収集は社会人として、専門家として活躍するうえで大切なものです。試験に出なかったとしてもその知識が思わぬところで発揮され、あのときの4点よりもはるかに大きな財産となって役立つ…そんなこともあるでしょう。
ということで、本記事は一般知識の習得を否定するものではありませんので、ご理解いただけると幸いです。いろいろな対策を経て試験に臨み、その場でなんとかする方法を中心にご解説しました。また、現場思考力や読解力も法律家にとって重要な素養であると信じています。
試験中に「うわー!分からない問題ばっかり!」と感じても、ぜひ慌てずに。どこかに試験委員のヒント、サイン、サービス問題があるはずだ!と信じて解いてください。
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